「タッピングタッチ種まき通信12月号より」2020年12月発行
みなさん、お元気ですか? 新型コロナウイルスのワクチンに関する良いニュースも聞こえてきますが、欧米を中心としてまだまだ厳しい状況ですね。国内でも、Go To TravelやGo To Eat で、ちょっと楽しい時間を持ったり、気分転換してほっとしたりしている間に、またしても感染がじわじわと広がっている感じがあります。
さて、そんな中のタッピングタッチですが、以前のような活動はまだまだですね。めげずに、少人数で感染予防を万全にしながら、講座などの種まきを続けてくださっているインストラクターさんもおられます。そして、TTインストラクターの集いやスタディグループに参加される方も多く活発ですが、実際の活動としてはまだまだ厳しいです。
コロナの心身の影響に加えて、経済や生活への影響は計り知れないものがあります。人生にはたいへんな時期が何度も訪れるものですが、まさかこのような大きく厳しい状況が訪れるとは思ってもいなかった人がほとんどでしょう。
でも、「ピンチはチャンス」という言葉があるように、なにか大きな問題にぶち当たった時、大きな改善や飛躍がもたらされることもあります。タッピングタッチに関しても、そのことはとても当てはまると感じています。ここでは、コロナ禍におけるタッピングタッチの飛躍に関して、三つハイライトしてみたいと思います。
「飛躍① より広く、より多くの人に届ける」
その一つは、オンライン・コミュニケーションの利用によって、より広範囲に、より多くの人にタッピングタッチの種を届けることができるようになったことです。
前回の種まき通信(2020年8月)の、「コロナ禍において、タッピングタッチは役立つの?」でも書きましたが、タッピングタッチはとてもシンプルで学びやすい為、オンラインでの伝達やコミュニケーションが容易です。その為、活動範囲や選択肢がとても広がりました。これまで会えなかった人達や、アウトリーチできなかった人たちにまでケアを届けることが可能になりました。
タッピングタッチは、人から人へ、ゆっくり、優しく、ていねいに届けることを大切にしてきました。今もその基本は変わりません。でも、オンラインにタッピングタッチを乗せて届けることができるようになって、距離などの壁がなくなりました。それは、これまでローカルでしか聞けなかった音楽が、ラジオで遠くの多くの人達にとどくようになったことと同じようなものでしょうか。ある意味、画期的なことだと思います。タッピングタッチが、オンラインツールを使って、より多くの人達に役立つことへの窓が開かれた感じです。
最近の例としては、先月に開催された「オンライン基礎講座A」には、10組ほどの参加があり、北海道や九州からの参加者もおられました。頻度の少ないTTインストラクター養成講座だったりすると、遠方からの参加も珍しくないですが、ふつうの基礎講座ではまずないことです。もちろんオンラインでの講座には、直接に手直しやガイドができないことによる限界もあります。でも言葉での説明を工夫することで、タッピングタッチの基礎と「ゆっくり、やさしく、ていねいにお互いをケアすること」の楽しさや大切さを共有することが出来ました。
「飛躍② セルフケアとしての有用性と効果の再確認」
そして2つ目、コロナ禍におけるタッピングタッチの飛躍としては、タッピングタッチのセルフケアをフル活用することで、その有効性がより良く見えてきたことです。コロナ禍への適応の一つとして、「タッピングタッチによるセルフケア」を活動の中心にしたことで、その有用性と効果を再確認することになりました。
最近の試みとしては、先月「タッピングタッチ・セルフケア・プログラム」をおこないました。3回の講座に加えて、2週間のあいだ毎日20分ほどのセルフケアをする、というオンライン・プログラムです。
20人もの方がとても誠実に、熱心に参加してくださり、とても充実したプログラム(講座)になりました。ご家族のことで途中から参加できなかった方、一人を除いて、みなさん最後まで、そしてその後のフォローアップまで参加してくださいました。心理、福祉、医療などの専門領域でお仕事をされている方も多かったです。
ここで、参加者のみなさんの感想を少しひろってみたいと思います。「この2週間は、あなたにとってどのような体験でしたか?」への回答です。
●1日に1回は、自分の身体をいたわろうという気持ちを持てた毎日でした。
● 仲間がいることで継続でき、その結果いろんな気づきを得られた貴重な体験だった
● 2週間、毎日日課のように取り組めたこと、ルーチンの苦手な私にとってひとつの成功体験でした。
● 自分を大切にすることを意識づけられる時間だった。物のように扱わずと言う言葉がとても自分に入ってきて楽しみな時間となっていた。
● 自分一人でやろうとすると、忙しい日常の中後回しでできなくなってしまいがちですが、今回は皆さんといっしょでしたので続けることができました。
● タッピングタッチのセルフケアの方法を学ぶことで、自分へのいたわり、ふだんおろそかにしがちな自分の大切な身体を感じることができました。
● 自分と向き合い、自分の身体を感じ愛おしむ気持ちが芽生えました。
これらの感想からは、① 2週間というスケジュールによって、日課のようになり続けることが出来たこと、② 他の人と一緒に参加することで、励ましになったこと、そして、③自分自身をいたわり、大切にするという体験が新鮮だったこと、などが含まれています。
タッピングタッチの基本は、基本形です。お互いをケアする。このことを基礎としたホリスティック(統合的)ケアです。今も変わりはありません。でも、私にとっても、セルフケアとタッピングタッチの有効性が確認できた大切な機会になりました。効果研究も兼ねていたので、リサーチ結果などはまたの機会にお知らせしたいと思います。
現代は、コロナのことを含めてストレス社会です。そして一人住まいだったり、してもらう人がいなかったりする人が多いのも現実です。そんな中、自分自身を大切にする時間をとり、セルフケアできることは重要です。子ども達もつらい時に自分自身をケアし大切にするスキルと感性を身に着けることが、とても大切です。これまでお互いをケアする基本型に重点を置くことで、セルフケアの方法がおろそかになりがちでしたが、大切にしていきたいと思います。
「飛躍③ コロナ禍の日常におけるお互いのケア」
最後に、ピンチが飛躍につながるということの3つ目は、もっと本質的なことに繋がるように思います。安心して誰でも身近にできるタッピングタッチは、人と一緒にいたり、触れたりすることを自粛する社会において、とても役立つものであるということです。
触れることやケアし合うことが中心のタッピングタッチは、この時代に役立たないのではと感じたときもありました。でも、その思いもしばらくすると払拭されました。コロナによって心の余裕がなくなり、関係性や相互支援が希薄になるなか、お互いをケアすることを基礎としたタッピングタッチの有用性が浮き彫りになってきたからです。
これまでも、日本の人々の関係性の希薄さは気になっていましたが、このコロナ騒動でより深刻になっているように思います。コロナで私たちはソーシャルディスタンスをしいられ、マスクで顔を覆わなければならなく成りました。コロナの感染予防にはとても大切ですが、同時に人とのつながりや関係を奪われているかのようです。孤独な人はより孤独に、そして病気や支援の必要な人に手が届きにくくなっています。
子ども達は、他人や大人の感情が分からなくなり、ゆうことを聞かなくなったりしているようです。私たち大人は、人の表情をみながら育ち社会生活をしてきましたから、マスクの人達が多くても、ある程度は想像して済ますことができます。でも、まだ成長段階の子供たちにとっては、感情的そして人間的な成長に大きな影響を与えてしまうでしょう。
良いワクチンが開発されて、今回のウイルス騒動は収束に向かうことが予想されます。でも私たちの地球環境はたいへん厳しく、人類にとってとても厳しいものであることには変わりありません。そんな時期において、人々がお互いを大切にし、サポートし合える関係を構築できるかどうかがとても大切だと思います。
世界では、Black Lives Matterなどでもみられるように、お互いを尊重し良い社会を作ろうとする熱い思いが共鳴し高まっています。コロナと遭遇することで、タッピングタッチのケアの特性が活かされ、その活動がより活発になることで、より多くの人々に役立っていくことを心から願います。この冬も、支援を必要とする人たちに、優しく温かいタッチとケアが届きますように。