ケアによる健康で豊かな生活を ケアし合う大切さ
私の専門は臨床心理学です。カウンセリングや心理療法を通して心をケアしたり、セルフケアのやり方を教えたりすることが多かったのですが、触れることやお互いにケアし合うことの本当の大切さには気が付いていませんでした。
しかし、タッピングタッチというケアの技法を通して、「触れ合う」とか「ケアし合う」ことがとても大切であり、にもかかわらずそのことが私たちの生活から抜け落ちていることに気付いたのです。
そして、実際にタッピングタッチをすることで、してもらう人もしてあげる人もお互いが優しさや思いやりの気持ちを取り戻していくという、そんな素敵な変化を目の当たりにしてきました。
ある学校のPTAに呼ばれて講演とワークをしました。後日、こんな感想がたくさん届きました。
「普段忙しく働いていて心に余裕がありませんでした。そんな親たちにタッピングタッチはとてもいいと感じました」
「講演が終わる頃には皆さん、とても和やかな気持ちになっていました。大人も子どももいろんなストレスの中で生活しています。家に帰ってぜひ家族にもやってあげたくなりました」
「人の手って本当に温かくてやさしいんですね。どれだけ相手のことを思っても時間に追われて表現できなかったりします。ゆったりとした時間の中で、相手をケアし、一緒にいることの大切さを感じました」
昨年、沖縄のある病院から「タッピングタッチをとり入れたい」という依頼があり、教えに行きました。
今、看護師さんや介護士さんなど、ケアの専門家が心身共にくたくたになっています。学校現場でも、心の病で休職したり離職されたりする先生が少なくありません。そういう方たちのストレスケアとして、自分でもできる「セルフタッピング」をお伝えしています。タッピングタッチ協会のHPで紹介していますので、参考にしてください。
それから医療現場でも患者さんの緊張や不安を和らげることにとても有効です。ホスピスでも心のつらさは薬ではどうにもなりません。人がケアするのが何よりです。
介護家族の方もタッピングタッチを学んで利用することができます。介護する側のストレスも多いので、ケアし合ってもらうようにします。
海外にも教えに行っています。言葉や文化が違っても、手とハートだけを必要とするタッピングタッチはとても有効だと感じています。
タイのスマトラ沖地震の被災地にも行きました。ウガンダの元子ども兵のリハビリ施設でも紹介しました。タッピングタッチはトラウマの軽減効果もあるので、心の傷を深く受けている子どもたちにも有効です。また、アフリカのエイズ患者さんには、家族でケアできるように学んでもらいました。
大きな利点は、何も特別なものを必要とせず、専門家でなくてもケアできるということです。
この厳しい時代において、タッピングタッチが多くの人や家族に伝わり、健康で豊かな生活のケアになっていくことを、私は心から願っています。
(大阪で開かれた「タッピングタッチによる心のケア基礎講座」より/取材・大槻博美関西特派員~終わり)